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代々木忠プロフィール

アダルトビデオに出る主婦たち

 多くの主婦たちが、私の作品に出演した。なぜ主婦がビデオに出てしまうのか、監督である私自身が最初はわからなかった。事前の面接で出演動機を聞くと、彼女たちは口をそろえて、こう言った。

 

 「私も、主婦である前にひとりの女なんです」

 

 一見もっともなこの言葉の裏側には、彼女たちがビデオ出演に迷い、悩んだすえに到達したエクスキューズが隠されている。なかには、お金に困っている人もいた。だが、お金に困った主婦がみんなアダルトビデオに出るわけではない。結局、彼女たちは夫とのSEXに満足していないのだ。

 

 彼女たちの話を聞いているうちに、多くの夫婦が愛以外のもので結婚しているんだな、と思った。それは、容姿であったり、経済力であったり、学歴であったり、社会的地位であったり、将来性であったり、周囲からの説得であったり……。

 

 外側で結婚した夫の前で、彼女たちはいい子を演じている。だから、夫に自分の醜いところは見せられない。ましてやSEXで乱れる姿など見せられるわけがない。たとえそれが自分の本当の姿だったとしても、はしたない女、安っぽい女だと思われたくないのだ。夫に甘えることすらできないから、心の中のSOSも、いつのまにか相手を批判することによってしか表現できなくなっている。

 

 だが、撮影現場でオーガズムを体験したとき、彼女たちは自分の中にある本当の心をのぞくことになる。彼女たちは私にたとえばこう話してくれる。

 

 「求めるだけで、私はあの人に何も与えていなかった」

 「あの人は私以上に孤独だった」

 

 それらは彼女たちの心にもともと存在していた思いなのだ。それが、偽りの自分を演じているうちに、いつしか奥底へと閉じ込め、自己を正当化するために“ないこと”にしてしまっていたのだろう。

 

 彼女たちの話を聞いて、私も私自身の過去をふり返り、自分も“ないこと”にしていたな、と思う。

 

『色即是空』より


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