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思い出の置き場所


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 高校へ入学してすぐに、息子が私に言いました。「母さん、俺、大学入ったら、一人暮らしするからね」私は、この甘えん坊が、大丈夫?と内心思いながら、「わかったよ。巣立ちだね。高校の間に料理や掃除、洗濯が自分でできるようになっといてね」と答えました。
 不思議なことに、息子があと少しで巣立っていくと言葉に出したあと、ふとした折に人肌恋しさや、時には性的に気持ちよくなりたいという衝動が起きるようになりました。

 そんな折、ネットで検索していたら、“女性向けAV”というワードに行き当たりました。若い頃AVは苦手でしたが、“女性向け”というワードに好奇心を覚えて、韓流ドラマを見るような気軽さで、一つの作品を見てみました。
 若い頃AVを見たときのような嫌悪感は全く起きませんでした。「あらら、私20代の頃、こんなセックスしてたわ、懐かしい」そう思った途端、急に涙が出てきたのです。思いがけないことでした。

 話は過去へ、20代半ばへ遡ります。私は厳格な両親に育てられ、「道を決して外れない優等生」という感じの地味な人でした。地元の大学を出て、地元で就職し、その職場で「彼」に出会いました。
 彼は同じ高校出身で、東京の大学を出てからUターンして同期入社しました。彼を一言で表現するなら「自由な遊び人」でしょうか。地元に戻ったばかりなのに、入社1ヶ月で宴会部長になっていました。はっきり言って苦手なタイプで、あまり近寄らないようにしていました。
 ところが、彼は残業している私に差し入れをしてくれたり、なにかと近寄ってきては時に食事に誘うのです。何回も断るのが申し訳なくて、食事をオーケーしたら、彼の普段の行動からは予想もできませんでしたが、まるでお姫様のように大切に私を扱ってくれました。帰り道、お酒も入ってすっかり打ち解けた気持ちになった私は、部屋まで送ってくれた彼に、もう少し一緒にいたいとお願いしました。「優等生」な私にはありえない行動でした。

 それから私は彼と体を重ねるようになりました。彼と私ではセックスに関する経験値が全く違いました。私は男性とおつきあいするのは2人目でした。彼は「今まで200人の女と経験した」と言っていました。彼に指でイカされるのも、舐められてイカされるのも、中でイカされるのも、何もかもが初めての経験でした。彼は先生で、私は貪欲な生徒でした。「目開けてこっちを見て」「そこ気持ちいいよ、上手」「入るところ見て、エロいね」「声出すの我慢しないで」そんなふうに私は少しずつ開かれていきました。

 そんな関係になって数ヶ月たった頃、彼は3日間の出張に出かけることになりました。出かけるとき彼は「行ってきます。俺のいない間、おまんこ触るなよ」とふざけて挨拶しました。私は軽く「行ってらっしゃい。あなたも手でしないでね。帰ってきてから私としてね」と返しました。彼はちょっとびっくりしたような顔をして出かけていきました。

 帰ってきたとき、彼は頬を紅潮させ、鼻の穴を膨らませて「我慢できない」といきなり激しいキスをしてきました。シャワーも浴びずに服を剥ぎ取り、すぐに二人とも裸になりました。彼の顔を見て、訳もわからず興奮してしまった私は、「入れちゃ駄目」と言いながら、彼の体のあちこちを軽く触れ、小さくキスし、そのたびに漏れる彼の喘ぎ声に嬉しくなりました。
 それまでは彼に言われてしていたフェラを自分から始めました。シックスナインに持ち込もうとした彼に「舐めるのも駄目」と言いながら。もう我慢できなくなった彼は有無を言わさず私の脚を開き、挿入しました。すっかり濡れて感じやすくなっていた私は、挿入だけでイキそうでした。強く突いたと思ったら弱く、強く突いてイキそうになったらふっと弱く……。なかなかイケません。
 「じらしてる?」と聞くと、「うん、仕返し」と答えます。いつもなら余裕の表情ですが、このとき彼は眉間に皺を寄せ、歯を食いしばっていました。「お願いイカせて」と私は自ら腰を上げ、脚を彼の腰に絡め、骨盤をぶつけました。彼は驚いて喘ぎ、私は強い波にさらわれました。「あれ? 彼はイッてない」そう思ったのがまともに考えられた最後でした。
 その後は体位を変えてはイキ、変えてはイキの繰り返し。「もう無理」と言えば、彼は「まだイケる」と返します。体のどこを触られても電流のように強い快感が走ります。どんな声を出しているのか、アソコがどうなっているのか、涙も鼻水もぐちゃぐちゃで、考えることもできません。正常位に戻ったとき、彼は睨むように私の目をとらえ、激しく喘ぎながら挑んできました。その顔を見て、彼の「もうイク」という絞り出すような声を聞いたとき、私のヒューズは飛びました。失神したのだと思います。
 気づいたら、彼は私の髪を撫でながら、ティッシュでお腹に飛んだ精液を拭いてくれていました。「気を失ってた?」と聞かれ、私は「何か白いもやがかかってた」と答えました。のどが渇いて辛かったので、手足を動かそうとしましたが、動きません。「水、欲しい。手足が動かないの」と言うと、彼は目を丸くして、ふらつきながら水を取りに行ってくれました。そのとき口移しで飲んだ水は、ぬるかったけれど異様に美味しく感じました。

 彼とは5年以上おつきあいが続きました。お互いの異動のため、遠距離になっても会えばほぼ毎回体を重ねました。ストレスをためた彼を抱きしめながら寝たことも、甘えたい私を彼がなだめながら寝たこともあります。このまま、結婚するのかなと思っていました。
 ところが、ある日突然、同僚から「彼が東京の大学時代の彼女と結婚した」と知らされました。その後の私の行動は言葉では表現できません。狂気に駆られたとしか言いようがありません。彼に会いにゆき、問いただし、狂ったように体を求めました。その狂気の中で先に登場した息子を授かりました。彼に妊娠を告げると、「僕は父にはなれない」と去って行きました。

 私は未婚の母になりました。彼との関係は道を外れたはしたない行動になり、私は恥ずかしくて顔を上げられなくなりました。それでも息子は宝物で、息子が見るものを見、息子が語ることを聞き、彼の成長に感動と驚きを感じて過ごしました。私は息子に母にしてもらえて感謝しています。息子との生活のため、子育てのしやすい職場を、事情を知った上司に紹介してもらうことができました。紹介してくださった上司に迷惑をかけないよう、必死に働きました。
 母としてキャリアウーマンとして私は成長できましたが、私自身は隠れたままでした。妊娠以前の友人とは会うことはできず、新たな友人と出かけることもしませんでした。彼と過ごした時間を思い出すことは胸に痛みをもたらすため、どこかへ封印しました。

 つい最近になって、一本のAV作品が私の心を揺さぶりました。こんなセックスが女性のファンタジーなら、もしかしたら、私は彼ととても素敵な瞬間を過ごせていたのかもしれない。急にそんな思いが湧き上がり、救いを求めるように性に関する本を読みあさり、気になったことをネットで検索するということを繰り返し、代々木監督のブログにたどり着きました。
 ブログの記事を一つ読むごとに涙が出ます。涙を流すと、重く硬い殻が一つ体から剥がれ落ちるような気がします。もしかして、彼との刹那刹那はすてきな思い出として心の宝箱へ入れてあげてもいいのかもしれない。そう思った途端、胸がドキドキしてきました。×が○へと変わったのでした。



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