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彼に教えた女


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 出会って18年、夫より長い付き合いの彼から、いつものように2週間遅れで、お誕生日のお祝いメールが届きました。安否確認メールと呼んでいます。

 

 私より12歳年上で既婚者の彼とは、出会って10年の間は別れては戻る、時には他の男性と同時進行、時には恋の相談相手として付き合っていました。

 私の結婚を機に、メールや電話のみのやり取りとなっても、毎年年始の挨拶と、互いの誕生日のお祝いメールは欠かさずやり取りしていました。

 また互いの状況を考えて、メールを送るのはどちらともなく当日から2週間開けてというのが慣例になっていました。

 

 今から3年前、そんな彼がこちらへ来る用事があったので、久しぶりに会うことになりました。

 5年ぶりに会う彼は、相変わらずシワのないシャツに趣味のいいネクタイをしていました。少し年をとった分、以前より穏やかな雰囲気の彼に何だか照れてしまいます。

 予感はしていましたが、30分ほどお茶を飲みながらお互いの近況を語るうちに、以前と同じ恋人同士の気分に戻っていました。

 

 「あれ、また見たいなぁ」

 「見たいかぁ? 本気で? いけない奥さんだな」

 

 あれとは、彼のペニスにある大きな黒いあざのことです。付け根から側部に広がるそのあざは普段は隠れていてあまり目立ちませんが、いきり立つと陰茎を巻くように見えました。

 彼はそれに軽くコンプレックスを持っているようでしたが、私の体が求められている証のようで、私はそのあざが大好きでした。

 

 昼下がりのホテルに着くと、手早く服を脱ぎ、互の体を見つめました。

 「おまえ、また太ったろ?」

 確かめるように彼の大きな手が、私の腰や胸を撫で回します。

 

 恥ずかしくて、私は少しおどけて答えいました。

 「うるさいなぁ。私はあなたが、どこをどう押したら、どう鳴くか知ってるのよ? 鳴かせてあげるから・・・」

 一番に、愛しい大きなあざに軽く口づけました。

 そのまま、あざをなぞるように舌で丁寧に舐め上げ、彼の先端からしみ出た蜜を舌先で優しくすくい上げていると、「んうぅ・・・」と彼から吐息を伴った、私の耳をくすぐる、低く湿った声が漏れてきました。

 そういえば、男の人がセックスで気持ちいい時に声を出すことも、そして私がそんな声がたまらなく好きだということも教えてくれたのは彼でした。

 

 探るように、思い出すように、彼に優しく体を愛されました。

 私の前髪をかき上げて、おでこやまぶたにそっとキスしてくれました。

 肩を軽く歯を立てて噛まれると、芯がとろけて力が入らないくらい弱いことを、彼は憶えていてくれました。

 つながりながらキスするのが好きなことも・・・。

 

 我慢したいのに、つま先からゆっくり舌で舐め上げられながら、足首を甘噛みされるたび、短い悲鳴をあげてしまいます。

 体の力が抜けきってしまった私の、すでに恥ずかしいくらい濡れている部分を、彼はわざと音を立てて舐めてくれました・・・。

 

 あぐらをかいた彼の上に私が座り、挿入されながらギュッと抱きしめられると、懐かしい熱が中からも外からも広がってきます。

 懐かしさと、愛しさと、じわりと沁み出してくる快感を味わっていると、彼がささやきました。

 

 「ねぇ、・・・おまえの唾、ちょうだい」

 「へ?」

 思わず間の抜けた返事をしてしまいました。

 そんな要望を彼から聞いたのは初めてだったからです。会わなかった5年間で新しく覚えたのでしょう、切なそうな恥ずかしそうな彼の表情に、不思議な感覚を覚えました。

 12歳も年上の男の、成長? というか、変化というか。「まぁ、そんなこと覚えてきたの? すごいわねぇ」といった母親のような感覚です。

 

 出会った頃は好きで好きで、この人無しでは生きていけないと、本気で思っていたこともありました。きっとその頃の私なら、ペニスを噛みちぎるくらい嫉妬していたかもしれません。

 が、不思議とその時は、変化してきた彼を見たいと思いました。そして何となく、彼との男女の関係は卒業する時期なのかなと感じました。

 

 「いいよ」

 私は彼の肩に手をかけたまま、腰を上げて膝で立ち、そっと舌を出しました。

 彼は嬉しそうに、苦しそうに、舌を出して私を見上げています。

 

 ちょっと情けない彼の表情を見ながら、さまざまな思いが頭をよぎりました。

 これを教えた女の人は、やはり彼の大きなあざを愛しているのかな。

 妻にはこの顔を見せているのかな? 見たとしても、私のように呑気な思いでいられるわけないか・・・。

 

 私の舌先から垂れる雫を彼はもどかしそうに受けていました。

 とうとう彼は待ちきれずに、そのまま舌を絡めると、私の体を引き寄せ、再び、ずんっと私の中に入ってきました。

 まるで別の生き物のように口の中でのたうちまわり絡まる舌と、気のせいかさっきより熱く硬い彼のものに上から下からかき混ぜられ、気が遠くなるような快感に包まれました。

 「もっと。もっと、して・・・」

 私の口から自然とはしたないお願いが出てきました。

 このまま壊れてもいいと思った途端、頭の中が真っ白になって、私は果ててしまいました。

 

 彼の微かな寝息を聞きながら、満ち足りてベッドで横になっていると、ふと、ある可能性に気づきました。

 

 教えたのが妻だったら・・・。

 

 彼女への嫉妬と妬ましさに眠れぬ夜もありました。逆に浮気性の夫を持ったかわいそうな人と思うことで精神の均衡を保っていた時もありました。結局勝てなかったと、泣いた時期も・・・。

 

 もしも妻だったら・・・その可能性に私は、なんだか気持ちよくスカッと、彼女に負けた気がして、急に愉快になってきました。

 

 別れ際、彼の趣味のいいネクタイが夫の新しいスーツに合うなと思った時、初めて私は彼を通じて彼女の趣味も好きだったんだなと気づきました。

 

 妻が教えた可能性はおそらく低いでしょうが、そう考えた方が、スッキリ負けを認められて、人生もおもしろい気がして・・・。

 

 結局今も彼に聞いていません。

 この3年間に、何度か会うチャンスもありましたが、彼とは会っていません。

 

 今でも愛しい彼に対して情熱がなくなったのか、私が年を取ったのか、人の妻という立場になったからなのかわかりませんが、激しくドロドロとした感情が、成仏していったような不思議な感覚でした。

 

 そしていつか、夫が私のようにたちの悪い、なかなか切れない彼女を作ったら・・・。

 その時はどんなことを夫に教えようかと少し楽しみだったりしています。



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