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女性に読んでほしいコラム


第82章 瞑想の恩恵

 世界的に瞑想ブームだ。今という時代にマインドフルネスがぴったりハマッている。グーグルやアップル、P&Gなどの大企業が社内研修に取り入れていることは以前にも書いたけれど、アメリカでは終末医療にまでマインドフルネスが活用されている。

 かつては東洋の神秘という言葉をよく耳にした。西洋人にとって東洋は文字どおり神秘だったのだろう。キリスト教をはじめ一神教圏にもともと瞑想はなかったと思うが、今では欧米において瞑想に関する科学的研究が盛んに行なわれている。

 脳の機能を計測できるfMRIの登場によって、瞑想をしているとき、脳のどの部位がどう変化しているのかも詳細にわかるようになった。

 いろいろな結果が発表されているが、主なものだけ簡単に記すと、瞑想をしているとき、人間の脳で最も発達しているといわれる「前頭葉」はオフの状態になり、知覚情報を処理している「頭頂葉」の活動はゆるやかになる。感覚入力を中継する「視床」は他のシグナルの侵入を阻止し、「網様体」は警戒態勢を解く。そして、共感をつかさどる「側頭頭頂接合部」が活性化する。

 ということはどういうことなのかと言うと、集中力が高まり、記憶力や創造性がアップする、ストレスが軽減され、不安が和らぐ、思いやりの気持ちが育まれるというのが、科学的に証明されてきたということである。

 ダライ・ラマ14世は、30年前からほぼ1年に1回、神経科学者、物理学者、心理学者たちと対話を行なってきた。瞑想というものの効果を宗教家と科学者が対話の場をもって本格的に研究していこうというセッションだ。言い方を換えれば、それは2500年に及ぶ仏教の瞑想修行から現代科学が何を学び取れるかの試みでもある。このセッションが3年前に京都で開催されたのだが、「ここに来てやっと」という思いが僕の中にはある。

 欧米、とりわけアメリカに比べて日本は、瞑想の科学的な研究がずいぶん遅れた。その原因としては、オウム真理教の事件が大きいだろう。あの事件のあと、ヨガや瞑想など一切合切が怪しいものとして一括りにされた感が否めない。テレビもそちらには目を向けなくなった。それが近年ようやく日本も追いついてきたと思えるのである。

 僕自身も、呼吸法と瞑想は毎日欠かさず続けている。今回は「慈悲の瞑想」を最後に紹介しておこう。僕のやり方は、呼吸法である程度トランスに入ったとき、息を吸いながら「生きとし生けるものが」と心の中で念じ、吐きながら「どうぞ幸せでありますように」と心の中で念じる。「心の中で」を繰り返したのは、頭で考えるのではなく、心を意識することが大切だからだ。

 このように念じる言葉が加わることが、ふつうの瞑想との違いである。僕の例は気に入った一言を少しだけアレンジしているが、実際にはかなり長い。つまり、念じるフレーズは何でもいいわけではなく、お釈迦様の時代から上座部仏教に伝わってきた文言をあらかじめ覚えておかなければならない。

 そこはたしかに大変なのだけれど、「慈悲の瞑想」はふつうの瞑想に比べて、より短時間で同じ効果がもたらされると科学的にも証明されているようである。