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女性に読んでほしいコラム


第69章 結婚と不倫

 7年ほど前、ブログで「ピラミッド型の力学が終わり、多次元的な円の時代に入った」という話を書いたことがあった。当時それを読んだ森くんから、撮影の合間に「いつごろそう感じたんですか?」と訊かれたことがあった。

 その森くんの著書の一冊が、森林原人『偏差値78のAV男優が考える セックス幸福論』(講談社文庫)である。花房観音の『指人形』(講談社文庫)の解説を書いたのがきっかけだったと聞く。

 『セックス幸福論』を読ませてもらって感じたのは、次のようなことだ。

 不倫というのは読んで字のごとく、発覚すればバッシングを受ける。有名人のケースは言わずもがなだが、一般の人でも不倫していると言えば聞こえはよくない。かつては不倫を罰する姦通罪というのもあったし、僕らの世代はその倫理観を少なからず引きずっているところがある。週刊誌やテレビが芸能人の不倫を叩くのも、「不倫はけしからん」と思っている読者や視聴者がそれなりの数いるからだろう。

 ところが、森くんの本を読んでいると、いろいろな生き方があっていいんだということをあらためて認識させられる。『セックス幸福論』の中に、愛人がいるメイクさんとの会話が出てくる。ダンナさんはそれを知らないが、「知っても怒らないと思う」と言う彼女に、森くんが「なんで?」と尋ねる。(以下、本文より引用)

 〈「家のことしっかりやってるし、私が一番大切にしているのは家族だってわかってるから」
 「だったらなんで愛人なんて作るんですか?」
 「どれだけ大切に思う家族でも、そこだけでは満たせない何かがあって、それを満たそうとしてるのかな」〉

 そして、このエピソードのしばらくあとに、森くんはこう書いている。

〈結婚とは忍耐、そういうもんだからという考え方も根強くありますが、女性の性欲を認めざるをえない昨今の流れから行くと、女性側に我慢を強いる割合が高い既存の価値観は時代に適応していないような気がします〉

 このメイクさんのように「不倫をすることで、むしろ家庭が円満にいく」という人が増えている。女性に限った話ではない。男も女も、セックスの相手を外に求めて、それで夫婦がうまくいくのならば反論できないよなと僕も思う。

 ただし、こういうのは制度の側から見たら困った現象に違いない。でも、変化のスピードに制度が追いついていないことのほうが問題なのだ。“夫婦とはかくあるべし”というピラミッド型の力学は終わり、価値観が多様化したなかで、共鳴する人たち同士がつながっていく多次元的な円の時代に入った。

 新たな時代においては、それまで隠しおおせていた闇が白日の下にさらされてゆく。近年、世間を騒がせた自動車メーカーによる排ガス規制逃れや燃費データの不正・改ざん問題にしても、歴史も信用もある大企業の“嘘”が露呈している。つまり、ピラミッド型力学の終焉とは、従来の権威の失墜なのである。

 そんな時代の不倫とは、いったいどんなものだろうと僕はふと考える。昔だったら「浮気するつもりなら墓場まで持っていけよ!」と言われたものだ。だが、これからはおそらく違うのだろう。

 7年前、森くんの中に「ピラミッド型」や「多次元的な円」という言葉はなかったはずだが、現場を通じて同じようなことを肌身で感じていたからこそ、僕のブログを読んだ後あえて質問してきたのだろう。その時点で彼は「そんなのもう当然だよ」とすでに思っていたのかもしれない。

 時代とともに価値観は変遷してゆく。夫婦だけが変わらないはずはない。