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女性に読んでほしいコラム


第36章 3つのオーガズム

 女性たちと話をしているとき、あるいはメディアから取材を受けているとき、ひと口に「オーガズム」と言っても、人によってそのイメージはバラバラであることに気づく。それは大学の先生においても、なお同様である。たとえば一例をあげれば、イクとオーガズムは果たしてイコールなのか……。

 

 今から20年以上前に上梓した『プラトニック・アニマル』は、いわばオーガズムに関する理論と方法の書だが、この中でオーガズムは特に区分されていない。だがのちに、僕はオーガズムを3つに分けてとらえたほうが、より正確に伝わるのではないかと思い直した。

 

(1)小さなオーガズム

 

 これは“肉体的な快感”が頂点に達したときに我を忘れる状態である。この場合の多くは、肉体的な刺激をフィードバックさせて自己完結している。だから、セックスしている相手と心の交流がないのが特徴だ。オナニーでイクのも、オナニーのようなセックスでイクのも、それは小さなオーガズムと言えるだろう。クリトリス派といわれる女性の多くや、射精が最終的な快楽だと信じ込んでいる男性のほとんどがここに属する。

 

(2)中くらいのオーガズム

 

 肉体的な快感よりも、むしろ好きな相手への“心のときめき”のほうにウエイトが置かれたセックスに多く見られる。肉体の快感の頂点と心と心の融合から起きる忘我の状態。心ゆえに感動をともない、「好き!」「愛してる!」といった思いが込み上げ、それが言葉となって現われる。また、このオーガズムを体験しているカップルのセックスは、目と目を見つめ合いながら愛し合っているのが特徴である。そして思わず涙が溢れてくることも多い。

 

(3)大きなオーガズム

 

 心というプリズムを通さずにダイレクトに“魂同士が共鳴し合う”ことから訪れる至福の境地。このオーガズムを体験すると、気づきが起きて、人生観が一変し、それまでネガティブだった生き方もポジティブに変容する。小さなオーガズムが肉体の快感によって我を忘れ、中くらいのオーガズムが心の融合によって忘我の境地に至るのに対して、この大きなオーガズムでは、明け渡しによって自分そのものがいなくなる。一種のスピリチュアル体験である。

 

 オーガズムを大中小に分けてみたが、厳密に言えば、僕が真のオーガズムと呼ぶのは3番目の「大きなオーガズム」だけだ。とはいえ、この30数年間で延べ1000人近くの女性たちを撮ってきたけれど、大きなオーガズムを体験した人は10人にも満たない。

 

 だから、大きなオーガズムを体験しなければ「そんなのはセックスじゃない」などとは、つゆほども思っていない。2番目の「中くらいのオーガズム」に至れば、人はセックスでこの上ない幸せを実感できる。それは僕が保証する。性の道を究めるつもりならいざ知らず、ふつうの人はそれで充分なはずである。