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女性に読んでほしいコラム


第34章 「大きいほうがいい」と言うけれど

 人妻はアダルトビデオに欠かせない存在である。彼女たちは作品に力を与えてくれる、ありがたい存在なのだ。ただ、監督という立場を離れ、妻をもつ一人の男に戻ったとき、「夫がいながら、おまえ何考えてんだ!」という思いも正直ぬぐい切れない。そんな相反する気持ちで彼女たちと向き合ってきたが、先日撮った「ザ・面接VOL.134」に出た人妻には、心から「ああ、出てよかったな。出るしかないよな」と思った。

 

 なぜなら、彼女にはこんな事情があったからだ。結婚して3年。ダンナさんは外国人で、ある宗教の信者(国籍と宗教名はあえて伏せておく)。彼女自身は日本人で30代後半。ここまでなら、ビデオに出る理由もないのだが、ダンナさんのオチンチンが並外れて大きいらしい。どのくらい大きいかというと、握ろうとしても指がまわらないのだそうだ。

 

 結婚して最初のセックスで彼女のアソコは切れた。それ以降、痛くてできない。ダンナさんもそこは理解してくれて、もう入れようとはしないという。「そうすると、彼はあなたを手でイカせるの? あるいは舐めるとか?」と訊くと「宗教上、そういう行為は許されないんです」と彼女。いや、「そもそも結婚する前に寝てるだろ」って話なんだが、それも「宗教上、許されない」らしい。

 

 「なんで別れないの?」と訊いた僕に、彼女はこう答えた。「尊敬してるから」。ダンナさんはものすごく厳格というか、とても敬虔な信者なのだ。戒律によれば、クンニやフェラといった愛撫ばかりでなく、自慰行為も禁じられている。だから彼は自分で出すこともしない。

 

 彼女も結婚と同時に入信しているが、「私は守ったフリをして守っていない」そうで、この3年間、ダンナさんがいないときにビデオを見ながらオナニーしてきた。そのビデオの中では、みんな自由奔放に快楽を貪(むさぼ)っている。だから、彼女も一歩を踏み出すことにしたのだ。最愛の夫と暮らしながら、彼女にとってはそれしかセックスする方法がなかったのである。このダンナさんならビデオを見ることもないだろうし、バレる可能性は確かにきわめて低い。

 

 現場で終わったあと、彼女は今の思いを吐露した。それを聞いて、エキストラの女の子たちは口々に「よかったね」と彼女を肯定した。何人かはウルウルしている。特異なケースではあるけれど、女同士ゆえ彼女の気持ちはよくわかったに違いない。

 

 僕はといえば、戒律を守らせてしまう宗教の力についてあらためて考えていた。彼女の場合は挿入もできなかったわけだが、もしふつうのサイズだったとしても、許されるのは挿入だけのセックスであり、前戯といえる前戯はないのだろう。つまり、それは生殖のための行為として認められているだけで、快楽の追求が許されているわけではない。

 

 僕は教義も知らないけれど、その宗教の中には人間の本能を禁じてでも、それを補って余りある教えがおそらくあるんだろうと思う。そして性の快楽を戒めたのは、当時の状況というか、社会的な背景が大きかったはずだ。ただ、時代が移り、人々の生活様式が変わろうとも、その戒律だけは変わらずに生きている。現代人である僕としては、そこに違和感を覚えるのである。