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女性に読んでほしいコラム


第33章 カラダの快感に気づかないアタマ

 この相談室に来られた女性(30代・主婦)の話である。すでに相談映像を掲載しているので、ご覧になった方もいるはずだ。彼女はセックスでイケないことにずっと悩んでいた。余談だが、「相談室」では「イク」関連の閲覧がとりわけ多い。相談に来た彼女同様、多くの女性がイクことに関心があるのだろう。

 

 相談者に話を戻すと、「性的に満足することが自分の人生で一番で、それがないならアナタといれないって感じて、ダンナにも言ってしまった」そうである。彼女は自分をイカせてくれる相手を求めて、夫以外の男とのセックスを重ねていく。

 

 その過程で、目を見ないと絶対できないという人に出会う。セックスで男と目を合わせられなかった彼女が、その人としているとき、見てくるので見返したら、とても温かくて「ああ、幸せだなぁ、本当に好きでいてくれてるんだ」と感じる。そして「目を見つめ合うセックスが、こんなにも気持ちいいものなのか」と。

 

 ことの詳細を夫には言わなかったものの、代わりに彼女は僕の本をすすめる。読み終えた夫は「目を見てしてみよう」と言ってくれたそうである。実際に夫としてみると、「好きっていう気持ちが入ってるとき」と「ただ見てるだけのとき」があり、その違いがはっきりわかるという。

 

 話を聴きながら、なるほど違いはわかるのだろうが、そのとき彼女は夫を観察してしまっているなと思った。「イケない子は冷静な自分がいる」と僕は彼女に言った。「頭が働いているってことは“今ここ”にいない。ところが、感じる世界というのは“今ここ”にしかない。だから、自分がセックスという行為そのものになったとき、オーガズムは訪れる。そこに思考はいっさい介在しないんだよ」と。

 

 「それは怖い」と言う彼女に、僕は呼吸法を試みることにした。長息から始めて短息、そして性器呼吸まで来ると、仰向けに寝た彼女はソファの上で感じ出し、「イキたい!」「イカせて~!」と叫んだ。やはり思いは先(未来)に行ってしまっている。呼吸法を終えてから、僕が「あのとき、そのまま楽しんでいれば……」と言いかけると、彼女はこんなことを口にした。

 

 「イキたいと言っている自分と、感じている自分が別だから。イキたいと言っているほうは、感じていることにも気がついてないんですよ」。僕はうまいことを言うなぁと思った。まさに彼女の言うとおりだ。呼吸法は自分の深いところまで覗いてしまう。おそらく気づきが起きたのだろう。

 

 彼女がさらに続ける。「コレ(イキたいと言っている自分)は興奮しないし、感動しないし、好きにもならないし、幸せ感もあまり感じない。幸せなんだろうなとは思うけど、コレが幸せと感じるわけじゃないから」。僕は彼女に「コレは“社会”だからね」と言った。

 

 相談の最後、僕は「この瞬間を生きるレッスン」をすすめた。それは「考える」から「感じる」へのシフトであり、今起きていることを楽しむ生き方である。さしあたってセックスでは、事前に自分で呼吸法をしてみることを提案した。性器呼吸まで行けば、おのずと欲情してくるに違いない。

 

 「じゃあ、呼吸法を1回だけじゃなく、何度かして(したいのを)我慢して、それからセックスします。そのくらい焦らさないとコレは落ちないと思うから」と彼女は言う。

 

 かつて「ようこそ催淫(アブナイ)世界へ」で、柏木みな(30歳)を撮ったときのことだ。前夜、柏木に呼吸法を行ない、催淫CDを聴かせた。ここで彼女に気づきが起きる。翌日、自分にコンプレックスを抱き、まだイッたことがないという女の子・岩崎あきら(32歳)と男優たちを迎えて、僕たちは「どうしたらイケるのか?」についてみんなで話していた。その一部を書き起こしてみる。

 

柏木「たぶん自分が、すっごい欲情してたんじゃないかな」

岩崎「私、足りないんですかね。でも、そういうのはあります。だけど、それは言っちゃいけないというか。冷静なフリをしてる自分をつねに演じているというか」

代々木「エッチしてるときも?」

岩崎「うん、でも、これしちゃいけないんじゃないかな、あれしちゃいけないんじゃないかなとか。自分の外見とかもすごいコンプレックスなんで、きっと今すごいヘンな顔してるんじゃないかなとか。(宙を指しながら)自分はこのへんにいて、『なに、こいつ!』って言って自分を見てる感じなんで」

代々木「そのへんにいる自分がいなくなりゃいいんだよな」

岩崎「そうですね」

 

 岩崎が言う「自分を見てる自分」とは、相談者の言う「コレ(イキたいと言っている自分)」と同じであり、その正体は思考なのだ。思考を落とすひとつの方法は「心(しん)から自分が欲情すること」。最初に柏木が言ったそのままである。

 

 たとえば何かにつけ、あれこれ考えてしまう質(たち)の人がいたとしよう。そんな人でも、とことん腹が減って、でも食べる物がなくて、さらに何時間も空腹に耐え、やっとのことで食事にありつき、ガッツイているときは、食べるのに夢中で何も考えてはいないはずだ。これと同じことをセックスでもすればいい。だが、思考が強固な場合、ちょっとやそっとの欲情では落ちてはくれない。相談者の彼女には、きっとそれがわかったのだろう。