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女性に読んでほしいコラム


第32章 テクニック無用論

 「ザ・面接 極悪非道の面接軍団 ジラして犯して暴いたる!」(1998年)のひとコマである。

 

 女子大1年・谷口佐代子(18歳)のプロフィールには、出演動機の欄にお金(カバン)と書かれている。きっとブランドもののバッグが欲しいのだろう。初体験は17歳6カ月のとき。資料を見ていた市原が「これ、6カ月前やで。大丈夫かい?」。初めてビデオに出るときはみんな緊張するものだが、セックスの経験が浅いとなればなおさらである。

 

 オフィス中央の大きなテーブルには、たまたま別の作品の出番待ちをしている川奈佳子というAVギャルがいた。もうすでに何本か出ている子だ。彼女の目の前で佐代子の面接が始まる。

 

 「念のために言っとくと、アソコを見られると恥ずかしいやろ? オレら、そんなんしかできひんのや! こういう明るいとこでな、パンツ脱がしてな、開いてイジくるわけよ! ほんでナンボなんよ。わかる? こういうのに耐えないと、カバンは遠いよ!」。どうやら恥辱によって、感情を出させる作戦のようだ。いきなりテーブルの上に寝かせて、問答無用の愛撫が始まる。

 

 その光景をAVギャルの佳子は唖然として見ている。彼女がこれまで出演した作品にはきっと台本があったり、「こういうことをやりますよ」という事前の打ち合わせがあったに違いない。

 

 ところが、当の佐代子は抵抗もせず、まったく恥ずかしがらない。テーブルの上で仰向けのまま無防備に股を広げ、アソコを舐められたり、バイブを突っ込まれたりしても、ずっと下半身はゆるみっぱなし。なのに、首から上は冷静で、ふつうに会話をしている。フェラをさせても、ただ口をあけているだけで画にならない。

 

 さすがに業を煮やした市原が、「こういうの、マグロっちゅうねん!」と佐代子に説く。たしかに見ている人の目には、彼女がどうにもならないマグロに映ったことだろう。

 

 一方、AVギャルの佳子のほうは「なにもわかんない子によくそこまでやるよね」という顔であきれ返っている。けれども、されている佐代子本人はといえば、それを悪くとっている様子はない。人間性というか、もともと素直な性格なのか、どうも最初に「明るくても、恥ずかしくても、それに耐えんと……」と市原から言われたことを彼女なりに実践しているようなのだ。

 

 攻めあぐねている面接軍団。「もうヤッちゃえ」とばかりに平本がハメる。すると、やっと佐代子に変化が生じる。今までマグロだった彼女が感じてきて、声をあげはじめたのだ。これがガンガン突いてイカせるタイプの男優だったら、きっとこうはならなかっただろう。平本は「その子のいいところを見いだして、どれだけ好きになれるかが勝負です」と言う男優である。

 

 あきれていた佳子も、次第に幸せそうな顔になってくる。僕はフレームに佐代子と佳子の両方を入れていたが、最後は見ている佳子のほうにズームしてゆく。うれしさでウルウルしそうな彼女の表情が、その場のすべてを物語っていると思ったからである。

 

 セックスが終わったあと、佐代子は平本に「ありがとう」と言う。平本も「こちらこそ」と。しばらくして片山が「最後終わったあと『ありがとう』って言ったよね?」と訊くと、彼女は「こんな私にも」とだけ言った。こんな私にも何だというのだろう……。

 

 経験も浅く、初めての現場で、されるがままのマグロにしかなれなかった女の子。年の差もキャリアの差もある平本は、しかし、そんな女の子を決して見下すことなく、むしろ自分のほうから声を出して、彼女とつながろうとした。性に対する思い込みやテクニックへの過信が彼女のほうになかったがゆえに、平本の思いはそのまま届いたはずである。「ありがとう」は、思いを受け取った佐代子の心が発した言葉のように僕には聞こえた。

 

 さんざん感じさせようと揉んだり、舐めたり、バイブの強い刺激を与えてなお反応のなかった女の子が、平本に心を開くことによってイッてしまった――ここにセックスの真髄がある。